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おもらいさん

【贋怪談徒然日記(2496)】

★某月某日

数年前の話。フェイク込み。

幼稚園時代からクレクレ行為が激しいセコママAさん。

東に宝くじが当たった人(スクラッチ千円)あらば飛んで行って奢ってクレクレ、西にまとめ買いで大量に物を運ぶ人あらばそんなにあるんだから少しくらいクレクレと、一帯の人ならば大抵顔を覚えられるほどの大活躍ぶりでした。

娘のA子ちゃんもお母さんによく似て積極的で、下手な男の子よりもガキ大将にふさわしい性格でした。

AさんはA子ちゃんを溺愛。何をしても叱らず、他の子を叩いても物を強奪しても、逆に相手の子を叱り飛ばしてトラブルになっていました。

そんなA子ちゃんも小学校に上がり、運悪く息子と同じクラスに。

過去に、財布を手に持っていただけで「買い物行くの?じゃあ私の分もお願い!(お金払って家まで持ってきての意)」等と意味の分からない絡まれ方もしたのでだいぶ警戒していました。

そしてAさんと直接顔を合わせてしまう魔の授業参観日、全身地味な服にダサい付録バッグという捨て身の作戦で挑みました。

クラスのママさんは殆ど地味〜な服装で、目が合うと何となく乾いた笑いを零しあうという微妙な連帯感の漂う中、授業は国語で内容は作文の発表。

作文の内容は「おうちの人のお仕事について」で、大抵の子はお父さんの職業について書いていましたが、中には専業主婦やパートについてなどのお母さんのお仕事を書いている子もいました。

A子ちゃんは初めからずーっと手を上げていたのですが、担任の先生はスルー。

目立ちたがりのA子ちゃんは立ち上がって悲鳴のような「はい!はい!」という声で当ててもらおうとしていて、これはまずいんじゃ…と思ったら案の定Aさんが「こんなに必死なのに無視するなんて!!」と声を上げて担任に詰め寄り始めました。

先生は「でも…」と言葉を濁していましたが、Aさんには敵わず、A子ちゃんを指してしまいました。

A子ちゃんは元気な声で、「私のお母さんのお仕事は、おもらいさんです!」と読み始めました。

教室が水を打ったように静まり返りますが、抑圧から解放されたA子ちゃんは止まりません。

「私のお母さんは、みんなから物を恵んでもらって、色んなものを持って帰ってきています!私が欲しいと言ったら、絶対に恵んでもらえるので、私は幸せです!」

やっと指名してもらえたA子ちゃん、嬉しさのあまり物凄い大声で読み上げていたため、我に返った先生が「はい、そこまででいいですよー」と止めても聞きません。

「だけど、たまに意地悪な人は物をくれないので、そういう人からはこっそり貰ってもいいので、こっそり持って行きます!もらったら私の名前やお母さんの名前を書くので、もう私やお母さんのものになって、みんな幸せです!」

真っ赤になってブルブル震えるAさんに全く気付かず、〆に「お母さんは、一生懸命おもらいをしているので、とても偉い人です!私は幸せです!将来は、お母さんみたいなおもらいさんになりたいです!」と語り、振り返って大好きなお母さんにピース。

周囲のママさん達は、ひそひそと「そういえばあのバッグ…」「あの服見覚えが…」「昨日食べたって自慢してた高いお肉って…」とささやき合っています。

子どもたちは「おもらいさん」という言葉の意味が分からず、普通に拍手をしていたので聞こえていなかったと思いますが…

直後、大注目の的となったAさんは、「ぎゃあえええええええ〜〜〜!!!!」と奇声を上げながら背後に飾ってある子どもたちの粘土細工を両腕でなぎ倒し、一つを前の黒板に(というか、担任に?)投げつけ、教室から逃走。

当然クラス内は子どもたちの泣き声で阿鼻叫喚の地獄絵図、授業参観は中断となりました。

その後のクラス会で、先生は「作文の内容について何度もA子ちゃんに書き直すように言ったが、聞かなかったため指さないようにすることにした」「今までA子ちゃんに注意するとAさんが即座に怒鳴り込んでくる、という行動が何度もあり…」と説明。

おもらいさんは職業じゃない、勝手に持って行くのは泥棒、という特別授業が後日組まれました。

A子ちゃんはその日からAさんが家から出さなくなってしまい、そのまま不登校→Aさん実家近くの学校へ転校。

奥さんの所業を全く知らなかったA旦那さんは、泥棒被害の方々への弁済と謝罪をしてまわり、見かける度にやつれて行っていました。

結局家を手放し借金までしなければならなくなったようで、A旦那さんも実家に帰り、Aさんを迎えに行くも義両親との同居は絶対しないとAさんに宣言され愛想をつかし離婚を提案。

Aさんは本気だと思わなかったようで、出せるもんなら出してみろとばかりに離婚届に判を押した結果、無事離婚成立。激怒したAさんは旦那さんの実家に怒鳴り込み、警察沙汰になって連れていかれた後は、誰も姿を見ていません。

A子ちゃんに「おもらいさん」を仕込んだのは誰だったのか…被害者の一人だったのではという噂が流れていましたが、真偽の程は定かではありません。

翌年からは、授業参観でおしゃれをするママさんがグッと増え、親同士のやりとりも盛んになってお互い様の助け合いが充実し、とてもいい環境になりました。

Kさんからの投稿。